こんにちは。PBMANです。
『菜根譚』(洪自誠著)は中国の人生訓・処世訓のを収録した本です。著書の洪自誠(本名:洪応明)は明代の学者、生没不詳、明代の思想家、学者です。おおよそ400年程前の本ということになります。大昔ながらの本ながら、現代に通じる部分は数多くあると思われるのは、いくら文明、科学発達しても、『人間』『人間社会』の本質は、昔も今もそれほど変わっていないからということができるのかもしれません。
社会という枠組みから完全に離れて生きることができない『人』ですが、その中でどのように自分自身が『人』として生きていくことができるかのヒントがこの本には含まれています。
今回は、前編157項の言葉をとりあげてみたいと思います。
しがらみのないライフスタイルを (菜根譚 前編157項)
今に心囚われるよりも、古きを温めよう
文華不如簡素 読今不如述古
(都会の華やかなさも、しがらみのないシンプルさには敵わない。今に心囚われるよりも、古きを温めよう)
交市人不如友山翁、
(都会であくせくしている人間よりは、山に隠居した老人との仲良くなる方がよい)
詣朱門不如親白屋;
(社会的に成功している権力者等よりは、むしろ質素に生活する庶民の方と親しくなる方がよい)
聽街談巷語不如聞樵歌牧詠,
(巷のくだらない噂話に夢中になるより、樵や牛飼いの歌に耳を澄ます方がよい)
談今人失德過舉,不如述古人嘉言懿行。
(人の失敗や成功の噂話で盛り上がるよりは、古の賢人の素晴らしい言行に思い至り話してみる方がよい)
『菜根譚』 前集157項より (訳 by PBMAN)
原文と意訳をお付けしました。自分の解釈を入れた訳にしておりますので、正確な翻訳ではないことをご了承いただけましたらと思います。
菜根譚 前編157項を読んで
しがらみのないライフスタイルへ。そして古きを温めてみよう。
発展する社会において、人が生きていくことは簡単ではありません。まして、その社会の中心とも言える都会で生きていくことは生易しいことではありません。
・商売でお金をたくさん稼ぐこと。
・会社内で出世すること。
・社会的に地位のあるポジションへ着くこと。
・それらすべてにおいて成功すること。
社会の価値基準の物差しとして、商売の成功、会社内での出世、社会的地位の獲得については明確な指標が存在します。その意味で、社会、業界、会社等における自分のポジション、立場というのは、はっきりしています。そして、そのポジションを上げていくということは、周りから、特に上からの評価もあってのことなので、とても大変なことです。
大きな会社の取引先の方、会社の上層部・上司の方、事業に関連する様な政治家・権力者の方、また大きく成功した実業家とのおつきあい。ビジネスを進めていく上で、そういう方々とのおつきあいが必要になる場面は少なからずあるでしょう。時には、便宜をはかってもらったりと、自分がビジネスを遂行する際に助かるだけでなく、自身の社会的成功(ポジションを上げていく)にとても役に立つことでしょう。
一方で、相手も人ですから、何らかの契機で先方のご機嫌を損ねてしまうと、ビジネスだけでなく、自身の社会的な信用面において大変なことになりかねません。とても気を遣わなければなりません。
このように、社会で成功しようともがけばもがくほど、心休まることはありません。そんな中で、自身の心の安定を失うことなく生きていくにはどうしたらいいのでしょうか。
人間社会の持つ価値基準から一度離れてみる必要があるのかもしれません。
社会的な成功の価値基準がはっきりしてしまっている世界とは無縁の場所に心身を投じてみます。
・山で隠居生活を送るおじいさん。
・都会の生活から離れた、農村で自然に触れてみる。
・時には古典を読み、言葉、人生について考えてみる。
それは、社会のしがらみから解放されたライフスタイルの実践といえるかもしれません。
一方で、こんな風に思うことはないでしょうか:
・「何をやってもうまくいかない」
・「他人が気になる」
・「やる気がでない」
心の声が弱音や悲鳴を上げているのであれば、それは心が疲れてしまっているからかもしれません。そんな時は、社会の価値基準、社会のしがらみに囚われてしまっている心を一度解き放ってみたら如何でしょうか。
「しがらみのないライフスタイル」を取り入れて、心をリセットし、心の安定を取り戻すのも一つの方法になるかもしれません。
まとめ
考えてみたら、現代の社会人は意識せずとも、心の底では「しがらみのないライフスタイル」求めて、自分なりに心のバランスを保っているのかもしれません。
アウトドアが好きな人は、週末にキャンプ、旅行、そして登山、海にでかけてリフレッシュをする。自然が好きな人は、日常の生活でよく散歩をしたり、時に公園や山に出向き散策をしたりしてリフレッシュをする。古典が好きな人は、家に閉じこもってはいるものの、思考の時空間でタイムトリップをして、良い言葉に出合って自分自身を高めていく。そうやって、一度社会生活とは自分を切り離して、疲れ易い「心」をメンテナンスしていく。
既に実践をできている方も、『菜根譚』の言葉を今一度考えてみては如何でしょうか。「しがらみのないライフスタイル」を完全に実行することは厳しいかもしれません。多少なりとも、意識することでこの現代社会で疲弊し過ぎることなく、バランスのとれた「心」を保ちつづける事につながりましたらと。
本記事があなたの思考とライフをより充実したものにする一助となりましたら大変幸いに存じます。
以上、ここまでお読みいただきましてどうもありがとうございました。
PBMAN
おまけ(中国語簡体字版/菜根谭/洪应明/前157项)
中国語の簡体字についても掲載してみました。
文华不如简素 读今不如述古
(都会の華やかなさも、しがらみのないシンプルさには敵わない。今に心囚われるよりも、古きを温めよう)
交市人不如友山翁、
(都会であくせくしている人間よりは、山に隠居した老人との仲良くなる方がよい)
谒朱人不如亲白屋;
(社会的に大成功している権力者等よりは、むしろ質素に生活する庶民の方と親しくなる方がよい)
听街谈巷语不如闻樵歌牧咏,
(巷のくだらない噂話に夢中になるより、樵や牛飼いの歌に耳を澄ます方がよい))
谈今人失德过举,不如述古人嘉言懿行。
(人の失敗や成功の噂話で盛り上がるよりは、古の賢人の素晴らしい言行に思い至り話してみる方がよい)
『菜根譚』 前集157項より (中国語(簡体字)) (訳 by PBMAN)
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